医療法人化するデメリット
医療法人設立にはメリットばかりでなくデメリットももちろんあります。
具体的には附帯業務の禁止規定の存在、利益金の配当が禁止、交際費の損金算入が制限、事務手続きが増加、社会保険が強制加入になるなどです。
経営上のデメリット
- ① 医療法人の附帯業務禁止規定
-
1.一人医師医療法人が営むことができる業務は、1.本来の業務 2.附帯業務 3.付随業務の3つに限定されています。
2.附帯業務とは本来の業務に支障のない限り、定款の定めるところにより次の業務を行うことができます。
- 医療関係者の養成又は再教育
- 医学又は歯学に関する研究所の設置
- 医療法第39条第1項に規定する診療所以外の診療所の設置
- 疾病予防のために有酸素運動を行わせる施設であって、診療所が附置され、かつ、その職員、設備及び運営方法が厚生労働大臣の定める基準に適合するものの設置
- 疾病予防のために温泉を利用させる施設であって、有酸素運動を行う施設を有し、かつ、その職員、設備及び運営方法が厚生労働大臣の定める基準に適合するものの設置
- 前各号に掲げるもののほか、保健衛生に関する業務
- 社会福祉法第2条第2項及び第3項に掲げる事業のうち厚生労働大臣が定めるものの実施
- 老人福祉法第29条第1項に規定する有料老人ホームの設置
- ② 社会保険が強制加入となります
-
医療法人となれば健康保険、厚生年金に強制加入となります。個人開業時代は国民健康保険料が最高限度額で56万円(年額)であり、国民年金が14,500円(月額)であったのに対して法人折半となり、所得金額によってはその負担額は増大します。
- ③ 提出書類の義務化
-
平成19年4月1日以降に始まる会計年度では、監事を中心として医療法人の透明性の確保を図ることとされています。
Ⅰ 医療法人は、毎会計年度終了後2カ月以内に事業報告書等を作成する
Ⅱ 理事は、事業報告書等を監事に提出しなければならない。
Ⅲ 監事は、毎会計年度、監査報告書を作成し、年度終了後3カ月以内に社員総会又は理事に提出すること。
Ⅳ 医療法人は、毎会計年度終了後3カ月以内に事業報告書等とともに監査報告書を都道府県知事に届出ること。
役員変更や資産金額に変更があれば法務局へ登記が必要となります。
- ④ 都道府県知事による立入り検査
-
都道府県知事又は厚生労働大臣による指導監督権限(報告徴収、立入り検査、改善命令、業務停止命令、役員の解任勧告、設立許可の取消)があります。
医療法人の業務若しくは会計が法令または定款に違反している疑いがあり、又はその運営が著しく適性を欠く疑いがあるときは、都道府県知事は医療法人に報告を求め、官吏にその事務所に立ち入り状況検査させることができます。
運営が著しく適性を欠くとは附帯業務に多額の投資をするなどして本来の診療所業務の運営に悪化を招いていると認められる場合などをいいます。
税務上のデメリット
- ① 交際費を損金算入できる額に限度があります
-
個人開業のときには交際費に限度枠は無く、事業に関連した飲食代等は全て経費になりましたが、医療法人化によりその交際費に限度枠が発生します。
資本金1億円以下の場合は、400万円まで90%が損金算入できます。資本金1億円以上の法人では、全額損金不算入となります。
- ② 個人でかけていた小規模企業共済は脱退
-
税法上、小規模企業共済等掛金控除として、各年の課税対象となる所得金額から控除することができますが、法人化することにより原則として脱退しなければなりません。
その代わりに法人へ移行後は社内規則に役員の退職金規定を設ければ勇退時、死亡時でも退職金として受け取れます。なお、小規模企業共済では掛金の上限が月額7万円までですので給付金額にかなりの差が出ます。